黷ハなるべし。初の栖家《すみか》をも忘れぬなるべし。亡き母御にはぐゝまれ、かの栖家にありしときは、ドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]が事をも、我上をも思はざりしならん。然るに今はドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]と我と、そちに親きものになりぬ。この交《まじはり》もいつか更《かは》ることあらん。かく更りゆくが人の身の上ぞ。我。されどおん身は、我母上の如く果敢《はか》なくなり給ふことはあらじ。斯く云ひて、我は涙にくれたり。フランチエスカ[#「フランチエスカ」に傍線]。死にて別れずば、生きながら分れんこと、すべての人の上なり。そちが我等とかく交らぬやうにならん折、そちが上の樂しく心安かれ、とおもひてこそ、我は今よりそちが發落《なりゆき》を心にかくるなれ。我涙は愈※[#二の字点、1−2−22]繁くなりぬ。我はいかなる故と、明には知らざりしが、斯く諭《さと》されたる時、限なき幸なさを覺えき。フランチエスカ[#「フランチエスカ」に傍線]は我頬を撫でゝ、我が餘りに心弱きを諫《いさ》め、かくては世に立たんをり、いと便《びん》なかるべしと氣づかひ給ひぬ。この時主人の君は、曾て我頭の上に月桂冠を戴せたるフアビ
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