分で少し汲んでみましょう」安寿は汐を汲み覚えた。
隣で汲んでいる女子に、無邪気な安寿が気に入った。二人は午餉《ひるげ》を食べながら、身の上を打ち明けて、姉妹《きょうだい》の誓いをした。これは伊勢の小萩《こはぎ》といって、二見が浦から買われて来た女子である。
最初の日はこんな工合に、姉が言いつけられた三荷の潮も、弟が言いつけられた三荷の柴も、一荷ずつの勧進を受けて、日の暮れまでに首尾よく調《ととの》った。
――――――――――――
姉は潮を汲み、弟は柴を苅って、一日一日《ひとひひとひ》と暮らして行った。姉は浜で弟を思い、弟は山で姉を思い、日の暮れを待って小屋に帰れば、二人は手を取り合って、筑紫にいる父が恋しい、佐渡にいる母が恋しいと、言っては泣き、泣いては言う。
とかくするうちに十日立った。そして新参小屋を明けなくてはならぬときが来た。小屋を明ければ、奴《やっこ》は奴、婢《はしため》は婢の組に入るのである。
二人は死んでも別れぬと言った。奴頭が大夫に訴えた。
大夫は言った。「たわけた話じゃ。奴は奴の組へ引きずって往け。婢は婢の組へ引きずって往け」
奴頭が承って
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