寒い、浜辺に行った姉さまは、さぞ潮風が寒かろうと、ひとり涙をこぼしていた。
日がよほど昇ってから、柴を背負って麓へ降りる、ほかの樵《きこり》が通りかかって、「お前も大夫のところの奴か、柴は日に何荷苅るのか」と問うた。
「日に三荷苅るはずの柴を、まだ少しも苅りませぬ」と厨子王は正直に言った。
「日に三荷の柴ならば、午《ひる》までに二荷苅るがいい。柴はこうして苅るものじゃ」樵は我が荷をおろして置いて、すぐに一荷苅ってくれた。
厨子王は気を取り直して、ようよう午までに一荷苅り、午からまた一荷苅った。
浜辺に往く姉の安寿は、川の岸を北へ行った。さて潮を汲む場所に降り立ったが、これも汐の汲みようを知らない。心で心を励まして、ようよう杓《ひさご》をおろすや否や、波が杓を取って行った。
隣で汲んでいる女子《おなご》が、手早く杓を拾って戻した。そしてこう言った。「汐はそれでは汲まれません。どれ汲みようを教えて上げよう。右手《めて》の杓でこう汲んで、左手《ゆんで》の桶《おけ》でこう受ける」とうとう一荷汲んでくれた。
「ありがとうございます。汲みようが、あなたのお蔭で、わかったようでございます。自
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