山椒大夫
森鴎外
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)越後《えちご》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|隅《すみ》へはいって
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「米+巨」、第3水準1−89−83]
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越後《えちご》の春日《かすが》を経て今津へ出る道を、珍らしい旅人の一群れが歩いている。母は三十歳を踰《こ》えたばかりの女で、二人の子供を連れている。姉は十四、弟は十二である。それに四十ぐらいの女中が一人ついて、くたびれた同胞《はらから》二人を、「もうじきにお宿にお着きなさいます」と言って励まして歩かせようとする。二人の中で、姉娘は足を引きずるようにして歩いているが、それでも気が勝っていて、疲れたのを母や弟に知らせまいとして、折り折り思い出したように弾力のある歩きつきをして見せる。近い道を物詣《ものまい》りにでも歩くのなら、ふさわしくも見えそうな一群れであるが、笠《かさ》やら杖《つえ》やらかいがいしい出立《いでた》ちをし
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