》を入れる※[#「木+累」、第3水準1−86−7]子《かれいけ》が添えてある。新参小屋はほかの奴婢《ぬひ》の居所とは別になっているのである。
 奴頭が出て行くころには、もうあたりが暗くなった。この屋《いえ》には燈火《あかり》もない。

     ――――――――――――

 翌日の朝はひどく寒かった。ゆうべは小屋に備えてある衾《ふすま》があまりきたないので、厨子王が薦《こも》を探して来て、舟で苫《とま》をかずいたように、二人でかずいて寝たのである。
 きのう奴頭に教えられたように、厨子王は※[#「木+累」、第3水準1−86−7]子《かれいけ》を持って厨《くりや》へ餉《かれい》を受け取りに往った。屋根の上、地にちらばった藁の上には霜が降っている。厨は大きい土間で、もう大勢の奴婢《ぬひ》が来て待っている。男と女とは受け取る場所が違うのに、厨子王は姉のと自分のともらおうとするので、一度は叱られたが、あすからはめいめいがもらいに来ると誓って、ようよう※[#「木+累」、第3水準1−86−7]子《かれいけ》のほかに、面桶《めんつう》に入れた※[#「飮のへん+亶」、第3水準1−94−10]《かたかゆ
前へ 次へ
全52ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング