す。」
十四
命日毎に壽阿彌の墓に詣《まう》でるお婆あさんは何人《なんぴと》であらう。わたくしの胸中には壽阿彌研究上に活きた第二の典據を得る望が萌《きざ》した。そこで僧には卒塔婆《そとば》を壽阿彌の墓に建てることを頼んで置いて、わたくしは藁店の家を尋ねることにした。
「藁店の角店《かどみせ》で小間物屋ですから、すぐにわかります」と、僧が教へた。
小間物屋はすぐにわかつた。立派な手廣な角店で、五彩目を奪ふ頭飾《かみかざり》の類が陳《なら》べてある。店頭には、雨の盛に降つてゐるにも拘《かゝは》らず、蛇目傘《じやのめがさ》をさし、塗足駄《ぬりあしだ》を穿《は》いた客が引きも切らず出入してゐる。腰を掛けて飾を選んでゐる客もある。皆美しく粧つた少女のみである。客に應接してゐるのは、紺の前掛をした大勢の若い者である。
若い者はわたくしの店に入るのを見て、「入らつしやい」の聲を發することを躊躇《ちうちよ》した。
わたくしも亦忙しげな人々を見て、無用の間話頭を作《な》すを憚《はゞか》らざることを得なかつた。
わたくしは若い丸髷《まるまげ》のお上《かみ》さんが、子を負《おぶ》つて
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