門《かど》に立つてゐるのを顧みた。
「それ、雨こん/\が降つてゐます」などゝ、お上さんは背中の子を賺《すか》してゐる。
「ちよつと物をお尋ね申します」と云つて、わたくしはお上さんに來意を述べた。
 お上さんは怪訝《くわいが》の目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つて聞いてゐた。そしてわたくしの語を解せざること良《やゝ》久しかつた。無理は無い。此《かく》の如き熱閙場裏《ねつたうぢやうり》に此の如き間言語《かんげんぎよ》を弄《ろう》してゐるのだから。
 わたくしが反復して説くに及んで、白い狹い額の奧に、理解の薄明がさした。そしてお上さんは覺えず破顏一笑した。
「あゝ。さうですか。ではあの小石川のお墓にまゐるお婆あさんをお尋なさいますのですね。」
「さうです。さうです。」わたくしは喜《よろこび》禁ずべからざるものがあつた。丁度外交官が談判中に相手をして自己の某主張に首肯せしめた刹那のやうに。
 お上さんは纖《ほそ》い指尖《ゆびさき》を上框《あがりがまち》に衝《つ》いて足駄を脱いだ。そして背中の子を賺《すか》しつゝ、帳場の奧に躱《かく》れた。
 代つて現れたのは白髮を切つて撫
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