家からは目附、下目附、足軽小頭に足軽を添えて、乗物に乗った二人と徒歩《かち》の文吉とを警固した。三人が筒井政憲の直《じき》の取調を受けて下がったのは戌の下刻であった。
十六日には筒井から再度の呼出が来た。酉の下刻に与力《よりき》仁杉《にすぎ》八右衛門の取調を受けて、口書を出した。
この日にりよは酒井亀之進から、三右衛門の未亡人は大沢家から願に依って暇《いとま》を遣《つかわ》された。りよが元の主人細川家からは、敵討の祝儀を言ってよこした。
十九日には筒井から三度目の呼出が来た。九郎右衛門等三人は口書下書を読み聞せられて、酉の下刻に引き取った。
二十三日には筒井から四度目の呼出が来た。口書清書に実印、爪印をさせられた。
二十八日には筒井から五度目の呼出が来た。用番老中水野越前守|忠邦《ただくに》の沙汰で、九郎右衛門、りよは「奇特之儀《きどくのぎ》に付《つき》構《かまひ》なし」文吉は「仔細無之《しさいこれなく》構なし」と申し渡された。それから筒井の褒詞《ほうし》を受けて酉の下刻に引き取った。
続いて酒井家の大目附から、町奉行の糺明《きゅうめい》が済んだから、「平常通心得《へいじょ
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