護持院原の敵討
森鴎外

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)播磨国《はりまのくに》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)城主酒井|雅楽頭忠実《うたのかみただみつ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)大きく※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》った。
−−

 播磨国《はりまのくに》飾東郡《しきとうごおり》姫路《ひめじ》の城主酒井|雅楽頭忠実《うたのかみただみつ》の上邸《かみやしき》は、江戸城の大手向左角にあった。そこの金部屋《かねべや》には、いつも侍《さむらい》が二人ずつ泊ることになっていた。然《しか》るに天保《てんぽう》四年|癸《みずのと》巳《み》の歳《とし》十二月二十六日の卯《う》の刻|過《すぎ》の事である。当年五十五歳になる、大金奉行《おおかねぶぎょう》山本|三右衛門《さんえもん》と云う老人が、唯《ただ》一人すわっている。ゆうべ一しょに泊る筈《はず》の小金《こがね》奉行が病気|引《びき》をしたので、寂しい夜寒《よさむ》を
次へ
全54ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング