仰を受けたるは茶事に御用に立つべき珍らしき品を求むる外《ほか》他事なし、これが主命なれば、身命に懸《か》けても果さでは相成らず、貴殿が香木に大金を出す事不相応なりと思され候《そろ》は、その道の御心得なき故《ゆえ》、一徹に左様思わるるならんと申候。横田聞きも果てず、いかにも某は茶事の心得なし、一徹なる武辺者《ぶへんもの》なり、諸芸に堪能なるお手前の表芸が見たしと申すや否や、つと立ち上がり、脇差《わきざし》を抜きて投げつけ候。某は身をかわして避《よ》け、刀は違棚《ちがいだな》の下なる刀掛に掛けありし故、飛びしざりて刀を取り抜き合せ、ただ一打に横田を討ち果たし候。
 かくて某は即時に伽羅《きゃら》の本木を買い取り、仲津《なかつ》へ持ち帰り候。伊達家の役人は是非《ぜひ》なく末木を買い取り、仙台へ持ち帰り候。某は香木を三斎公に参らせ、さて御願い申候は、主命大切と心得候ためとは申ながら、御役《おんやく》に立つべき侍《さむらい》一人討ち果たし候段、恐れ入り候えば、切腹|仰附《おおせつ》けられたくと申候。三斎公|聞召《きこしめ》され、某に仰せられ候はその方が申条一々もっとも至極《しごく》せり、たとい香
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