興津弥五右衛門の遺書
森鴎外

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)某《それがし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十一(十七)年|駿河国《するがのくに》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「鈞のつくり」、第3水準1−14−75]
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 某《それがし》儀明日年来の宿望《しゅくもう》相達し候《そろ》て、妙解院殿《みょうげいんでん》(松向寺殿)御墓前において首尾《しゅび》よく切腹いたし候《そろ》事《こと》と相成り候。しかれば子孫のため事の顛末《てんまつ》書き残しおきたく、京都なる弟又次郎宅において筆を取り候。
 某《それがし》祖父《そふ》は興津右兵衛景通《おきつうひょうえかげみち》と申《もうし》候《そろ》。永正《えいしょう》十一(十七)年|駿河国《するがのくに》興津《おきつ》に生れ、今川治部大輔《いまがわじぶたいふ》殿に仕え、同国|清見《きよみ》が関《せき》に住居いたし候。永禄《えいろく》三年五月二十日今川殿|陣亡《じんぼう》遊ばされ候《そろ》時、景通《か
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