、窓の外を通る学生を見ている。そして或る日自分の胸に何物かが芽ざして来ているらしく感じて、はっと驚いた。意識の閾《しきい》の下で胎を結んで、形が出来てから、突然躍り出したような想像の塊《かたまり》に驚かされたのである。
お玉は父親を幸福にしようと云う目的以外に、何の目的も有していなかったので、無理に堅い父親を口説き落すようにして人の妾《めかけ》になった。そしてそれを堕落せられるだけ堕落するのだと見て、その利他的行為の中《うち》に一種の安心を求めていた。しかしその檀那《だんな》と頼んだ人が、人もあろうに高利貸であったと知った時は、余りの事に途方に暮れた。そこでどうも自分一人で胸のうやもやを排し去ることが出来なくなって、その心持を父親に打ち明けて、一しょに苦み悶《もだ》えて貰おうと思った。そうは思ったものの、池の端の父親を尋ねてその平穏な生活を目《ま》のあたり見ては、どうも老人の手にしている杯《さかずき》の裡《うち》に、一滴の毒を注ぐに忍びない。よしやせつない思をしても、その思を我胸一つに畳んで置こうと決心した。そしてこの決心と同時に、これまで人にたよることしか知らなかったお玉が、始て独
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