森鴎外

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)上条《かみじょう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)当時|競漕《きょうそう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「二点しんにょう+向」、第3水準1−92−55]《はる》かに

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)一《いつ》の 〔fe^te〕《フェエト》 であった。
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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     壱《いち》

 古い話である。僕は偶然それが明治十三年の出来事だと云うことを記憶している。どうして年をはっきり覚えているかと云うと、その頃僕は東京大学の鉄門の真向いにあった、上条《かみじょう》と云う下宿屋に、この話の主人公と壁一つ隔てた隣同士になって住んでいたからである。その上条が明治十四年に自火で焼けた時、僕も焼け出された一人《いちにん》であった。
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