》の下宿屋に戻ったのである。
朝晩はもう涼しくても、昼中はまだ暑い日がある。お玉の家では、越して来た時掛け替えた青簾《あおすだれ》の、色の褪《さ》める隙《ひま》のないのが、肱掛窓《ひじかけまど》の竹格子の内側を、上から下まで透間《すきま》なく深く鎖《とざ》している。無聊《ぶりょう》に苦んでいるお玉は、その窓の内で、暁斎《ぎょうさい》や是真《ぜしん》の画のある団扇を幾つも挿した団扇挿しの下の柱にもたれて、ぼんやり往来を眺めている。三時が過ぎると、学生が三四人ずつの群をなして通る。その度毎に、隣の裁縫の師匠の家で、小雀の囀《さえず》るような娘達の声が一際|喧《やかま》しくなる。それに促されてお玉もどんな人が通るかと、覚えず気を附けて見ることがある。
その頃の学生は、七八分通りは後《のち》に言う壮士肌で、稀《まれ》に紳士風なのがあると、それは卒業|直前《すぐまえ》の人達であった。色の白い、目鼻立の好《い》い男は、とかく軽薄らしく、利いた風で、懐かしくない。そうでないのは、学問の出来る人がその中にあるのかは知れぬが、女の目には荒々しく見えて厭《いや》である。それでもお玉は毎日見るともなしに
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