立したような心持になった。
この時からお玉は自分で自分の言ったり為《し》たりする事を窃《ひそか》に観察するようになって、末造が来てもこれまでのように蟠《わだか》まりのない直情で接せずに、意識してもてなすようになった。その間《あいだ》別に本心があって、体を離れて傍《わき》へ退《の》いて見ている。そしてその本心は末造をも、末造の自由になっている自分をも嘲笑《あざわら》っている。お玉はそれに始て気が附いた時ぞっとした。しかし時が立つと共に、お玉は慣れて、自分の心はそうなくてはならぬもののように感じて来た。
それからお玉が末造を遇することは愈《いよいよ》厚くなって、お玉の心は愈末造に疎くなった。そして末造に世話になっているのが難有《ありがた》くもなく、自分が末造の為向けてくれる事を恩に被《き》ないでも、それを末造に対して気の毒がるには及ばぬように感ずる。それと同時に又なんの躾《しつけ》をも受けていない芸なしの自分ではあるが、その自分が末造の持物になって果てるのは惜しいように思う。とうとう往来を通る学生を見ていて、あの中に若し頼もしい人がいて、自分を今の境界《きょうがい》から救ってくれるよう
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