え。まるっきり見当が附かない」
「あら。そんな事を。今夜どこにいたのだか、わたしにそう云って下さいと云っているのに。あなた好くそんな真似が出来た事ね。わたしには商用があるのなんのと云って置いて、囲物なんぞを拵えて」鼻の低い赤ら顔が、涙で※[#「火+(世/木)」、第3水準1−87−56]《ゆ》でたようになったのに、こわれた丸髷《まるまげ》の鬢《びん》の毛が一握《ひとにぎり》へばり附いている。潤んだ細い目を、無理に大きく※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、末造の顔を見ていたが、ずっと傍へいざり寄って、金天狗《きんてんぐ》の燃えさしを撮《つま》んでいた末造の手に、力一ぱいしがみ附いた。
「廃《よ》せ」と云って、末造はその手を振り放して、畳の上に散った烟草の燃えさしを揉《も》み消した。
 お上さんはしゃくり上げながら、又末造の手にしがみ附いた。「どこにだって、あなたのような人があるでしょうか。いくらお金が出来たって、自分ばかり檀那顔《だんながお》をして、女房には着物一つ拵えてはくれずに、子供の世話をさせて置いて、好《い》い気になって妾狂《めかけぐる》いをするなんて」
「廃せ
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