馬鹿言え。お茶受もあるのだ」爺いさんは起って、押入からブリキの鑵《かん》を出して、菓子鉢へ玉子|煎餅《せんべい》を盛っている。「これは宝丹のじき裏の内で拵《こしら》えているのだ。この辺は便利の好《い》い所で、その側《そば》の横町には如燕《じょえん》の佃煮《つくだに》もある」
「まあ。あの柳原の寄席へ、お父っさんと聞きに行った時、何か御馳走のお話をして、その旨《うま》きこと、己《おれ》の店の佃煮の如しと云って、みんなを笑わせましたっけね。本当に福福しいお爺いさんね。高座へ出ると、行《い》きなりお尻をくるっとまくって据わるのですもの。わたくし可笑《おか》しくって。お父っさんもあんなにお太りなさるようだと好《い》いわ」
「如燕のように太ってたまるものか」と云いながら、爺いさんは煎餅を娘の前へ出した。
そのうち茶が来たので、親子はきのうもおとついも一しょにいたもののように、取留のない話をしていた。爺いさんがふと何か言いにくい事を言うように、こう云った。
「どうだい、工合は。檀那は折々お出になるかい」
「ええ」とお玉は云ったぎり、ちょいと返事にまごついた。末造の来るのは折々どころではない。毎晩
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