哀らしい囀《さえずり》の声を聞いて、覚えず微笑む。その時お玉はふいと自分の饒舌《しゃべ》っているのに気が附いて、顔を赤くして、急に話を端折《はしょ》って、元の詞数の少い対話に戻ってしまう。その総ての言語挙動が、いかにも無邪気で、或る向きには頗《すこぶ》る鋭利な観察をすることに慣れている末造の目で見れば、澄み切った水盤の水を見るように、隅々まで隠れる所もなく見渡すことが出来る。こう云う差向いの味は、末造がためには、手足を働かせた跡で、加減の好《い》い湯に這入って、じっとして温《あたた》まっているように愉快である。そしてこの味を味うのが、末造がためには全く新しい経験に属するので、末造はこの家に通い始めてから、猛獣が人に馴れるように、意識せずに一種の culture《キュルチュウル》 を受けているのである。
 それに三四日立った頃から、自分が例の通りに箱火鉢の向うに胡坐を掻くと、お玉はこれと云う用もないに立ち働いたり何かして、とかく落ち着かぬようになったのに、末造は段々気が附いて来た。はにかんで目を見合せぬようにしたり、返事を手間取らせたりすることは最初にもあったが、今晩なんぞの素振には何か
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