しいと云った。それからたったこの間妾と云うものにならなくてはならぬ事になった時、又悔やしいを繰り返した。今はそれが只妾と云うだけでなくて、人の嫌う高利貸の妾でさえあったと知って、きのうきょう「時間」の歯で咬《か》まれて角《かど》が※[#「元+りっとう」、第3水準1−14−60]《つぶ》れ、「あきらめ」の水で洗われて色の褪《さ》めた「悔やしさ」が、再びはっきりした輪廓《りんかく》、強い色彩をして、お玉の心の目に現われた。お玉が胸に鬱結《うっけつ》している物の本体は、強いて条理を立てて見れば先ずこんな物ででもあろうか。
暫《しばら》くするとお玉は起って押入を開けて、象皮賽《ぞうひまがい》の鞄《かばん》から、自分で縫った白金巾《しろかなきん》の前掛を出して腰に結んで、深い溜息《ためいき》を衝《つ》いて台所へ出た。同じ前掛でも、絹のはこの女の為めに、一種の晴着になっていて、台所へ出る時には掛けぬことにしてある。かれは湯帷子《ゆかた》にさえ領垢《えりあか》の附くのを厭《いと》って、鬢や髱《たぼ》の障る襟の所へ、手拭《てぬぐい》を折り掛けて置く位である。
お玉はこの時もう余程落ち着いていた。あ
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