A詞を継いだ。「あの雁は僕が取って来るから、その時は君達も少し手伝ってくれ給え」
「どうして取る」と、岡田が問うた。僕も覚えず耳を欹《そばだ》てた。
「先ず今は時が悪い。もう三十分立つと暗くなる。暗くさえなれば、僕がわけなく取って見せる。君達は手を出してくれなくても好いが、その時居合せて、僕の頼むことを聴いてくれ給え。雁は御馳走するから」と、石原は云った。
「面白いな」と、岡田が云った。「しかし三十分立つまでどうしているのかい」
「僕はこの辺《へん》をぶらついている。君達はどこへでも往って来給え。三人ここにいると目立つから」
僕は岡田に言った。「そんなら二人で池を一周して来ようか」
「好かろう」と云って岡田はすぐに歩き出した。
弐拾参《にじゅうさん》
僕は岡田と一しょに花園町の端《はな》を横切って、東照宮の石段の方へ往った。二人の間には暫く詞が絶えている。「不しあわせな雁もあるものだ」と、岡田が独言の様に云う。僕の写象には、何の論理的|連繋《れんけい》もなく、無縁坂の女が浮ぶ。「僕は只雁のいる所を狙って投げたのだがなあ」と、今度は僕に対して岡田が云う。「うん」と云いつ
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