ト、それが鋭角に聳《そび》えて、景物に荒涼な趣を添えている。この bitiume《ビチュウム》 色の茎の間を縫って、黒ずんだ上に鈍い反射を見せている水の面《おもて》を、十羽ばかりの雁《がん》が緩やかに往来している。中には停止して動かぬのもある。
「あれまで石が届くか」と、石原が岡田の顔を見て云った。
「届くことは届くが、中《あた》るか中らぬかが疑問だ」と、岡田は答えた。
「遣って見給え」
 岡田は躊躇《ちゅうちょ》した。「あれはもう寐《ね》るのだろう。石を投げ附けるのは可哀そうだ」
 石原は笑った。「そう物の哀《あわれ》を知り過ぎては困るなあ。君が投げんと云うなら、僕が投げる」
 岡田は不精らしく石を拾った。「そんなら僕が逃がして遣る」つぶてはひゅうと云う微《かす》かな響をさせて飛んだ。僕がその行方をじっと見ていると、一羽の雁が擡《もた》げていた頸《くび》をぐたりと垂れた。それと同時に二三羽の雁が鳴きつつ羽たたきをして、水面を滑って散った。しかし飛び起ちはしなかった。頸を垂れた雁は動かずに故《もと》の所にいる。
「中った」と、石原が云った。そして暫《しばら》く池の面《おもて》を見ていて
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