轣A追手《おいて》を帆に孕《はら》ませた舟のように、志す岸に向って走る気になった。それで梅をせき立てて、親許《おやもと》に返して遣ったのである。邪魔になる末造は千葉へ往って泊る。女中の梅も親の家に帰って泊る。これからあすの朝までは、誰にも掣肘《せいちゅう》せられることの無い身の上だと感ずるのが、お玉のためには先《ま》ず愉快でたまらない。そしてこうとんとん拍子に事が運んで行くのが、終局の目的の容易に達せられる前兆でなくてはならぬように思われる。きょうに限って岡田さんが内の前をお通なさらぬことは決して無い。往反《ゆきかえり》に二度お通なさる日もあるのだから、どうかして一度逢われずにしまうにしても、二度共見のがすようなことは無い。きょうはどんな犠牲を払っても物を言い掛けずには置かない。思い切って物を言い掛けるからは、あの方の足が留められぬ筈が無い。わたしは卑しい妾に身を堕《おと》している。しかも高利貸の妾になっている。だけれど生娘《きむすめ》でいた時より美しくはなっても、醜くはなっていない。その上どうしたのが男に気に入ると云うことは、不為合《ふしあわせ》な目に逢った物怪《もっけ》の幸《さいわ
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