朝飯の膳を台所から運んで来た梅が、膳を下に置いて、「どうも済みません」と云って手を衝いた。
 箱火鉢の傍に据わって、火の上に被《かぶ》さった灰を火箸で掻《か》き落していたお玉は、「おや、何をあやまるのだい」と云って、にっこりした。
「でもついお茶を上げるのが遅くなりまして」
「ああ。その事かい。あれはわたしが御挨拶に云ったのだよ。檀那はなんとも思ってはお出《いで》なさらないよ」こう云って、お玉は箸を取った。
 けさ御膳を食べている主人の顔を梅が見ると、めったに機嫌を悪くせぬ性分ではあるが、特別に嬉しそうに見える。さっき「何をあやまるのだい」と云って笑った時から、ほんのりと赤く※[#「均のつくり」、第3水準1−14−75]《にお》った頬のあたりをまだ微笑《ほほえみ》の影が去らずにいる。なぜだろうかと云う問題が梅の頭にも生ぜずには済まなかったが、飽くまで単純な梅の頭にはそれが根を卸しもしない。只好い気持が伝染して、自分も好い気特になっただけである。
 お玉はじっと梅の顔を見て、機嫌の好い顔を一層機嫌を好くして云った。「あの、お前お内へ往《い》きたかなくって」
 梅は怪訝《かいが》の目を
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