フ変化が末造には分からない。魅せられるような感じはそこから生れるのである。
お玉はしゃがんで金盥《かなだらい》を引き寄せながら云った。「あなた一寸《ちょっと》あちらへ向いていて下さいましな」
「なぜ」と云いつつ、末造は金天狗《きんてんぐ》に火を附けた。
「だって顔を洗わなくちゃ」
「好いじゃないか。さっさと洗え」
「だって見ていらっしゃっちゃ、洗えませんわ」
「むずかしいなあ。これで好いか」末造は烟《けぶり》を吹きつつ縁側に背中を向けた。そして心中になんと云うあどけない奴だろうと思った。
お玉は肌も脱がずに、只|領《えり》だけくつろげて、忙がしげに顔を洗う。いつもより余程手を抜いてはいるが、化粧の秘密を藉《か》りて、庇《きず》を蔽《おお》い美を粧《よそお》うと云う弱点も無いので、別に見られていて困ることは無い。
末造は最初背中を向けていたが、暫くするとお玉の方へ向き直った。顔を洗う間末造に背中を向けていたお玉はこれを知らずにいたが、洗ってしまって鏡台を引き寄せると、それに末造の紙巻を銜えた顔がうつった。
「あら、ひどい方ね」とお玉は云ったが、そのまま髪を撫《な》で附けている。くつ
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