ツ年に床に入《い》ってから寐附かずにいるな、目が醒めてから起きずにいるなと戒める。少壮な身を暖い衾《ふすま》の裡《うち》に置けば、毒草の花を火の中に咲かせたような写象が萌《きざ》すからである。お玉の想像もこんな時には随分|放恣《ほうし》になって来ることがある。そう云う時には目に一種の光が生じて、酒に酔ったように瞼《まぶた》から頬に掛け紅《くれない》が漲《みなぎ》るのである。
前晩《ぜんばん》に空が晴れ渡って、星がきらめいて、暁に霜の置いた或る日の事であった。お玉はだいぶ久しく布団の中で、近頃覚えた不精《ぶしょう》をしていて、梅が疾《と》っくに雨戸を繰り開けた表の窓から、朝日のさし入るのを見て、やっと起きた。そして細帯一つでねんねこ半纏《はんてん》を羽織って、縁側に出て楊枝《ようじ》を使っていた。すると格子戸をがらりと開ける音がする。「いらっしゃいまし」と愛想好く云う梅の声がする。そのまま上がって来る足音がする。
「やあ。寐坊だなあ」こう云って箱火鉢の前に据わったのは末造である。
「おや。御免なさいましよ。大そうお早いじゃございませんか」銜《くわ》えていた楊枝を急いで出して、唾《つばき
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