ニの境界がぼやけてしまった女たるに過ぎない。岡田はお玉のためには、これまで只欲しい物であったが、今や忽《たちま》ち変じて買いたい物になったのである。
お玉は小鳥を助けて貰ったのを縁に、どうにかして岡田に近寄りたいと思った。最初に考えたのは、何か品物を梅に持たせて礼に遣ろうかと云う事である。さて品物は何にしようか、藤村の田舎饅頭《いなかまんじゅう》でも買って遣ろうか。それでは余り智慧《ちえ》が無さ過ぎる。世間並の事、誰《たれ》でもしそうな事になってしまう。そんならと云って、小切れで肘衝《ひじつき》でも縫って上げたら、岡田さんにはおぼこ娘の恋のようで可笑《おか》しいと思われよう。どうも好《い》い思附《おもいつ》きが無い。さて品物は何か工夫が附いたとして、それをつい梅に持たせて遣ったものだろうか。名刺はこないだ仲町で拵《こしら》えさせたのがあるが、それを添えただけでは、物足らない。ちょっと一筆《ひとふで》書いて遣りたい。さあ困った。学校は尋常科が済むと下がってしまって、それからは手習をする暇も無かったので、自分には満足な手紙は書けない。無論あの御殿奉公をしたと云うお隣のお師匠さんに頼めばわ
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