トいるらしく見えていたが、この詞《ことば》を聞いて、岡田の方を見た。そして何か言いそうにして躊躇《ちゅうちょ》して、目を脇へそらした。それと同時に女は岡田の手に少し血の附いているのを見附けた。「あら、あなたお手がよごれていますわ」と云って、女中を呼んで上り口へ手水盥《ちょうずだらい》を持って来させた。岡田はこの話をする時女の態度を細かには言わなかったが、「ほんの少しばかり小指の所に血の附いていたのを、よく女が見附けたと、僕は思ったよ」と云った。
 岡田が手を洗っている最中に、それまで蛇の吭《のど》から鳥の死骸を引き出そうとしていた小僧が、「やあ大変」と叫んだ。
 新しい手拭《てぬぐい》の畳んだのを持って、岡田の側に立っている女主人が、開けたままにしてある格子戸に片手を掛けて外を覗いて、「小僧さん、何」と云った。
 小僧は手をひろげて鳥籠を押さえていながら、「も少しで蛇が首を入れた穴から、生きている分の鳥が逃げる所でした」と云った。
 岡田は手を洗ってしまって、女のわたした手拭でふきつつ、「その手を放さずにいるのだぞ」と小僧に言った。そして何かしっかりした糸のような物があるなら貰いたい、
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