チたり晴れたりしているもんだから、出ようかどうしようかと思って、とうとう午前の間中寝転んで、君に借りた金瓶梅《きんぺいばい》を読んでいたのだ。それから頭がぼうっとして来たので、午飯《ひるめし》を食ってからぶらぶら出掛けると、妙な事に出逢ってねえ」岡田は僕の顔を見ずに、窓の方へ向いてこう云った。
「どんな事だい」
「蛇退治を遣ったのだ」岡田は僕の方へ顔を向けた。
「美人をでも助けたのじゃないか」
「いや。助けたのは鳥だがね、美人にも関係しているのだよ」
「それは面白い。話して聞かせ給え」

     拾玖《じゅうく》

 岡田はこんな話をした。
 雲が慌ただしく飛んで、物狂おしい風が一吹二吹衝突的に起って、街《ちまた》の塵《ちり》を捲《ま》き上げては又|息《や》む午過ぎに、半日読んだ支那小説に頭を痛めた岡田は、どこへ往くと云う当てもなしに、上条の家を出て、習慣に任せて無縁坂の方へ曲がった。頭はぼんやりしていた。一体支那小説はどれでもそうだが、中にも金瓶梅は平穏な叙事が十枚か二十枚かあると思うと、約束したように怪《け》しからん事が書いてある。
「あんな本を読んだ跡だからねえ、僕はさぞ馬鹿げ
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