ス顔をして歩いていただろうと思うよ」と、岡田は云った。
暫くして右側が岩崎の屋敷の石垣になって、道が爪先下《つまさきさが》りになった頃、左側に人立ちのしているのに気が附いた。それが丁度いつも自分の殊更に見て通る家の前であったが、その事だけは岡田が話す時打ち明けずにしまった。集まっているのは女ばかりで、十人ばかりもいただろう。大半は小娘だから、小鳥の囀るように何やら言って噪《さわ》いでいる。岡田は何事も弁《わきま》えず、又それを知ろうと云う好奇心を起す暇《ひま》もなく、今まで道の真ん中を歩いていた足を二三歩その方へ向けた。
大勢の女の目が只一つの物に集注しているので、岡田はその視線を辿《たど》ってこの騒ぎの元を見附けた。それはそこの家の格子窓の上に吊《つ》るしてある鳥籠《とりかご》である。女共の騒ぐのも無理は無い。岡田もその籠の中の様子を見て驚いた。鳥はばたばた羽ばたきをして、啼《な》きながら狭い籠の中を飛び廻っている。何物が鳥に不安を与えているのかと思って好く見れば、大きい青大将が首を籠の中に入れているのである。頭を楔《くさび》のように細い竹と竹との間に押し込んだものと見えて、籠は
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