スが、岡田も矢《や》っ張《ぱり》ぼんやりしていたようだ。何か考え込んでいたのではあるまいか。こう思うと同時に、岡田がどんな顔をしているか見たいような気がした。そこで重ねて声を掛けて見た。「君、邪魔をしに往っても好《い》いかい」
「好いどころじゃない。実はさっき帰ってからぼんやりしていた所へ、君が隣へ帰って来てがたがた云わせたので、奮って明りでも附けようと云う気になったのだ」こん度は声がはっきりしている。
僕は廊下に出て、岡田の部屋の障子を開けた。岡田は丁度鉄門の真向いになっている窓を開けて、机に肘《ひじ》を衝《つ》いて、暗い外の方を見ている。竪《たて》に鉄の棒を打ち附けた窓で、その外には犬走りに植えた側柏《ひのき》が二三本|埃《ほこり》を浴びて立っているのである。
岡田は僕の方へ振り向いて云った。「きょうも又妙にむしむしするじゃないか。僕の所には蚊が二三|疋《びき》いてうるさくてしようがない」
僕は岡田の机の横の方に胡坐《あぐら》を掻《か》いた。「そうだねえ。僕の親父は二百十日のなし崩しと称している」
「ふん。二百十日のなし崩しとは面白いねえ。なる程そうかも知れないよ。僕は空が曇
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