を見て驚き、又獣が子供の目のやうな目でぢつとこちらを見ると、間の悪いやうな心持になる。
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 或る日M提督が己に猿の話をして聞かせた。その話は深刻な小説の材料にでもなりさうである。提督がまだ艦長でゐた時、恐ろしく敏捷な、小さいシンパンジイを連れてゐた。それは放して飼つてあつて、檣《ほばしら》に昇つたり、船の底に這入つたりしてゐた。水兵が演習をすると、猿が真似をする。水兵はそれを見て面白がつて、皆で可哀《かはい》がつてゐた。丁度陸軍に聯隊で飼つてゐる犬がゐるやうに、この猿は軍艦の猿になつてゐた。
 然るに或る日金剛石を嵌めた指輪がエツヰに入れた儘で紛失した。それの置いてあつた室の戸が開いてゐた時、戸口にゐたのを人に見られた一人の水兵が嫌疑者にせられた。そこで其水兵の挙動に注意する事になつた。水兵は周囲の人に目を付けられるのを悟つて、艦長の前に出て無造作にかう云つた。
「艦長殿、わたくしがダイアモンドを盗んだと思はれてゐるのでありますか。」
 艦長は答へた。「さうさな。兎に角猿が取つたとは誰も思つてゐないやうだ。」
 この詞を聞いた時、水兵の頭に或る考が浮か
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