猿
AFFENPSYCHE
ジユウル・クラルテエ Jules Clarete
森林太郎訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)生利《なまぎ》き
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「貝+藏」、126−上−13]品の
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ヒヨオ/\/\と
−−
猿と云ふものは元から溜まらない程己に気に入つてゐる。第一人間に比べて見ると附合つて見て面白い処がある。それから顔の表情も人間よりははつきりしてゐて、手で優しく搦み付くところなぞは、人間が握手をするよりも正直に心持を見せてゐるのだ。それから猿の一番好い性質は、生利《なまぎ》きにも猿を滑稽なものに言ひ做《な》してゐる人間よりも、遙に残酷でないことである。猿は昔から人間の真似をしてゐるが、まだ人間の乱暴と不行跡とを真似たことはない。只一つ猿の人間に優つてゐないところは、たしかに人間と同じやうに焼餅を焼くことである。ビユツフオンの飼つてゐたシンパ
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