全安と云ふ人のあることを報じた。それは池田京水の子と名を同じうしてゐるが故であつた。わたくしは其人を訪はむと欲して書を寄せた。そして其人の忽ち刺を通ずるに会つた。
わたくしは伊沢分家の語る所を聞いて、全安が嘉永二年に二十余歳で婿入をしたことを知つてゐた。若し客が其人だとすると、九十歳前後になつてゐなくてはならない。此の如き長寿の人も固より絶無では無い。しかし容易に未知の人を訪問しはせぬであらう。
又客が若し池田京水の族人でなかつたら、わたくしの書を得て、わたくしを見ようとはせぬであらう。
推するに客は京水の子全安の名を襲《つ》いだものではなからうか。わたくしは咄嗟の間に此の如く思量した。そして客を引見した。
座に入り来つたのは、洋服を著た偉丈夫である。躯幹《くかん》長大にして、筋骨が逞しい。打見るところは、僅に四十歳を踰《こ》えたかとおもはれる。
わたくしは此方《こなた》より訪ふべき人に訪はれたのであるから、先づ其|枉顧《わうこ》の好意を謝した。そして京水との親属関係を問うた。
「京水はわたくしの祖父でございます」と客は答へた。
「さやうでしたか。それではあなたは御尊父様のお
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