(匚<(たてぼう+「亞」の中央部分右側))」、第4水準2−86−13]庭先生の発会の日に当つて、飲酒量を踰《こ》え、無用の言説を弄した。信重は霊枢を引いてわたくしを諫めてくれた。わたくしは其切直の言を聞いて、始て信重が志操の疇昔に殊なるを知つた。之子《このし》の前途にはもはや憂慮すべきものが無い。わたくしは諸君と共に刮目して他年の成功を待たうとおもふ。
柏軒はこれを聞いて、汗出でて背《そびら》に浹《とほ》つた。此日の燕集が何のために催されたかは、その毫も測り知らざる所であつた。柏軒は此より節を折つて書を読んだと云ふのである。
柏軒は後|屡《しば/″\》人に語つて、「己は少《わか》い時無頼漢であつた」と云つた。志気豪邁にして往々細節を顧みなかつたのださうである。然るに一朝|擢《ぬきん》でられて幕府の医官となり、法眼に叙せられ、閣老阿部正弘の大患に罹るに及んでは、単身これが治療に任じ、外間謗議の衝に当つた。全く是れ榛軒が激※[#「厂+萬」、第3水準1−14−84]《げきれい》の賜であつた。
此事は独り松田氏が聞き伝へてゐるのみではなく、渋江保さんの如きも母|五百《いほ》に聞いて知つて
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