をは》つて架上の書を取つて柏軒に与へた。同じく是れ霊枢の一書であるが、父蘭軒の手校本である。
 柏軒の退いた後、榛軒は折簡して諸友を招いた。書中には、僕の家に慶事あり、諸君と喜を同じうせむと欲す云云の語があつた。

     その百八十三

 わたくしは松田氏の云ふ所の柏軒立志の事を以て、此年文政十一年正月の下に繋《か》くべきものとした。わたくしは先づ柏軒が兄榛軒を諫めたことを語つた。榛軒が多紀※[#「くさかんむり/(匚<(たてぼう+「亞」の中央部分右側))」、第4水準2−86−13]庭《たきさいてい》の家に於て、被酒《ひしゆ》して人と争つたのを聞き、霊枢年忌の文を引いて諫めたのである。榛軒は諫を納れ、弟の持ち来つた霊枢を乞ひ得て、弟に授くるに父蘭軒の手づから校する所の霊枢を以てした。
 尋で榛軒は諸友を招いて宴を開き、柏軒をして傍《かたはら》に侍せしめ、衆に告げて云つた。今日諸君の賁臨《ひりん》を煩はしたのは、弊堂に一の大いに喜ぶべき事があつて、諸君に其慶を分たむがためである。家弟|信重《のぶしげ》は此両三年行に検束なく、学業共に廃してゐた。然るに今春わたくしが※[#「くさかんむり/
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