其|齢《よはひ》を詳にしない。勇の所生《しよせい》の幼女れんは当歳である。
 文政十一年の蘭軒歳首の詩は、前年丁亥の事を叙せむがために、上《かみ》に其註を引いたが、今此に全篇を録する。「戊子元日作。満城晴雪映朝暾。恰是豊祥属正元。笑語熈々春自返。風烟軟々意先暄。家貧猶愛新増帙。身老尤忻初挙孫。別有間遊宜早計。梅花香発遍林園。第五註、客歳十二月元彫千金翼方影鈔卒業、第六註、十一月児厚挙女子、第七八註、臘前梅花半開、信頗異於常年。」
 正月九日の草堂集は例の如くであつた。「山荘春色雪初融。軽暖軽寒梅下風。何識佳賓来満坐。新年勝事属衰翁。」
 わたくしは蘭軒の三男柏軒立志の事を松田道夫さんに聞いた。道夫さんは曾て医を柏軒に学んだ人である。そしてわたくしは聞く所の事の是正月の下《もと》に繋《か》くべきものなるを謂《おも》ふ。此に先づ聞く所を叙することとする。
 某《それ》の歳|多紀※[#「くさかんむり/(匚<(たてぼう+「亞」の中央部分右側))」、第4水準2−86−13]庭《たきさいてい》の発会の日に、蘭軒の嫡子榛軒は酒を被《かうむ》つて人と争つた。柏軒はこれを聞いて、霊枢《れいすう》一巻を手
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