》。遠江国横須賀の城主西尾隠岐守|忠善《たゞよし》の臣である。
夏に入つて四月十三日の詩会が入谷村旭升亭に催された。宿題は「山中首夏」で、蘭軒は五絶五首を作つた。席上の詩は「夏日田園雑興」の七絶二首であつた。
此月蘭軒は「呉刻中蔵経跋」を作つた。清舶《しんぱく》載せ来る所の中蔵経に、周錫※[#「王+贊」、第3水準1−88−37]本《しうせきさんぼん》と孫星衍本《そんせいえんぼん》との二種がある。並に元人抄本に拠るもので僅に一巻を成してゐる。然るに宋代には別に扁鵲《へんじやく》中蔵経と云ふものがあつて、後人がこれを上《かみ》に云ふ所の中蔵経に併せ、分《わかつ》て八巻となした。呉勉学《ごべんがく》の刻する所の中蔵経が即是である。その宋時の古文を包容してゐることは、丁香散《ちやうかうさん》を載するを以て知られる。丁香散は朱肱《しゆこう》が活人書《くわつじんしよ》に、扁鵲中蔵経を引いて載せ、周孫等はこれを載せない。蘭軒が呉氏の八巻本に取ることある所以である。
その百七十四
蘭軒は此年丙戌の五月十三日に重て入谷村の旭升亭に会した。宿題は「夏菊」で、※[#「くさかんむり/姦」、
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