#「口+鬲」、第4水準2−4−23]噎」を病んで歿した。当時病牀に侍した人の記録は、一としてわたくしの目に触れぬから、わたくしは明確に茶山の病名を指定することは出来ない。しかし推するに茶山は食道癌若くは胃癌に罹つて歿したのであらう。
 わたくしの附記して置きたいのは、茶山の病が独り此|消食管《せうしよくくわん》の壅塞《ようそく》即《すなはち》所謂《いはゆる》※[#「口+鬲」、第4水準2−4−23]噎《かくえつ》のみではなかつたと云ふことである。わたくしは上《かみ》の甲申旺秋後の茶山の書牘を引くに当つて、其全文を写し出した。しかし彼書牘には尚傍註の一句があつた。そしてそれが括弧内にも収め難いものであつた。茶山は病める鵬斎に焼塩を送らむと欲して、その病の篤きを聞いて躊躇した。「さ候へば却而邪魔ものなるべし。」此「而」の字の中の縦線二条が右辺《いうへん》に逸出《いつしゆつ》してゐる。茶山は「而」の字より横に一線を劃して一句を註した。「この而のか様になり候様に引つける也。」乃《すなは》ち知る、茶山は上肢に痙攣を起すことがあつたのである。是は恐くは消食管壅塞の病に聯繋した徴候ではなからう。恐くは
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