古銭」と云ふことを知らんと欲した。蘭軒の典拠として取らぬ五雑組は手近にあるので、わたくしは直にその所謂「演為一話」と云ふものを検した。
秦の士に古物《こぶつ》を好むものがあつた。魯の哀公の席《むしろ》を買はむがために田を売り、太王|※[#「分+おおざと」、7巻−301−上−7]《ふん》を去る時の策《さく》を買はむがために家資を傾け、舜の作る所の椀を買はむがために宅を売つた。「於是披哀公之席。持太王之杖。執舜所作之椀。行丐於市曰。那箇衣食父母。有太公九府銭。乞我一文。」これが謝在杭《しやさいかう》の演《えん》し成した一|話《わ》であるらしい。
然らば此|話《わ》の本づく所は何であるか。わたくしは蒙斎筆談を見んと欲して頗る窮した。蒙斎筆談とはいかなる書か。試《こゝろみ》に書目を検すれば、説郛《せつふ》巻《けんの》二十九、古今説海の説略、学海類篇の集余《しふよの》四記述、稗海《はいかい》第三|函《かん》等に収められてゐる。説郛と学海類篇とには、著者の名を宋鄭景璧《そうのていけいへき》としてあり、古今説海と稗海とには宋鄭景望《そうのていけいばう》としてある。恐くは同一の書で、璧《へき》と望
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