蔵本と道蔵本に変改を加へたものとである。蘭軒はかう云つてゐる。「道家者流。要抗仏蔵之浩瀚。自嫌其書寡少。妄析其巻。虚張其目。如他素問。素廿四巻。分為五十巻。玄珠密語十巻。分十七巻之類。」
千金方の道蔵本は即ち九十三巻の嘉靖本で、四庫全書の収むる所である。
嘉靖本は我国に於ても亦飜刻せられた。これが万治本である。普通本は舶載嘉靖本と万治本とである。
猶我国には天明本がある。これは嘉靖本を変改して三十巻とし、題して元板飜刻と云ひ、京都に於て刊行した。
此の如く千金方は、支那に於ても我国に於ても、偽本のみ行はれてゐることゝなつた。それゆゑ金沢文庫の零本第一巻の貴いことは論なく、次に三十巻全備の書としては、北宋槧本の未だ世に出でざる間は、元槧本を以て第一に推さなくてはならなかつたのである。
只蘭軒の時には猶明の正徳中の刻本があつて、これは元槧本の旧に依つたものであつたが、それだに容易には獲られなかつた。蘭軒は「巻数体裁、与元板同、世不多有、而字形陋拙、刻様※[#「鹿/(鹿+鹿)」、第3水準1−94−76]悪、蓋為坊本」と云つてゐる。
元槧本はこれに反して、頗る意を校刻に用ゐたもので
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