あつた。蘭軒は「此本章句方法、彰々全整、而筆勢生動、盈満行界、銭氏所謂原書是也、可謂希世之本哉」と云つてゐる。銭氏とは読書敏求記を著した銭遵王《せんじゆんわう》である。
蘭軒は元板千金方を狩谷※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎に獲た。※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎はこれを万笈堂《まんきふだう》に獲た。これは亨和中の事であつた。此年癸未に蘭軒は関定能《せきさだよし》と云ふものをして装釘せしめて、自らこれに跋した。「此本二十年前。友人狩谷卿雲為余購得之於書賈英平吉。簡編蠧蝕。古色可愛。不欲繕修改旧。但平生披閲。怕愈就壊爛。頃日倩関定能。背装綴緝。跋以数語。吁余与卿雲。今倶為頒白翁。而尚孜々読書。不異少年之態。則其迂濶於世。固不復疑。毎相対嗤耳。信恬又識。」これが跋の後に低書《ていしよ》せられた識語の全文である。二人の頒白翁《はんぱくをう》は四十七歳の蘭軒と、四十九歳の※[#「木+夜」、第3水準1−85−76]斎とであつた。
蘭軒は又自らその蔵する所の金沢文庫零本千金方にも跋してゐる。しかしこれを書した年月を詳《つまびらか》にしない。「近日倩友人清川吉人※[#「墓
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