娘を将軍が養女にして妻《めあわ》せた人で、今年四十五歳になっている。名をお千《せん》の方《かた》という。嫡子《ちゃくし》六丸は六年前に元服して将軍家から光《みつ》の字を賜わり、光貞《みつさだ》と名のって、従四位下|侍従《じじゅう》兼|肥後守《ひごのかみ》にせられている。今年十七歳である。江戸参勤中で遠江国《とおとうみのくに》浜松まで帰ったが、訃音《ふいん》を聞いて引き返した。光貞はのち名を光尚《みつひさ》と改めた。二男|鶴千代《つるちよ》は小さいときから立田山の泰勝寺《たいしょうじ》にやってある。京都妙心寺出身の大淵和尚《たいえんおしょう》の弟子になって宗玄といっている。三男松之助は細川家に旧縁のある長岡氏に養われている。四男勝千代は家臣南条|大膳《だいぜん》の養子になっている。女子は二人ある。長女|藤姫《ふじひめ》は松平|周防守《すおうのかみ》忠弘《ただひろ》の奥方になっている。二女竹姫はのちに有吉《ありよし》頼母《たのも》英長《ひでなが》の妻になる人である。弟には忠利が三斎《さんさい》の三男に生まれたので、四男|中務《なかつかさ》大輔《たゆう》立孝《たつたか》、五男|刑部《ぎょうぶ
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