阿部一族
森鴎外

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)従《じゅ》四|位下左近衛少将《いのげさこんえのしょうしょう》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)従《じゅ》四|位下左近衛少将《いのげさこんえのしょうしょう》

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   (数字は、底本のページと行数)
(例)荼※[#「たへん」に「比」、17−上12]《だび》
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 従《じゅ》四|位下《いのげ》左近衛少将《さこんえのしょうしょう》兼|越中守《えっちゅうのかみ》細川忠利《ほそかわただとし》は、寛永十八年|辛巳《しんし》の春、よそよりは早く咲く領地|肥後国《ひごのくに》の花を見すてて、五十四万石の大名の晴れ晴れしい行列に前後を囲ませ、南より北へ歩みを運ぶ春とともに、江戸を志して参勤《さんきん》の途《みち》に上ろうとしているうち、はからず病にかかって、典医の方剤も功を奏せず、日に増し重くなるばかりなので、江戸へは出発日延べの飛脚が立つ。徳川将軍は名君の誉れの高い三代目の家光で、島原|一揆《いっき》のとき賊将|天草《あまくさ》四郎|時
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