うちその琴の上手な娘が、お母様に褒《ほ》められたのを聞いて、それではいつか往って弾いて聞かせようと云った。
 それから折々内に寄るので、僕が休日に帰っていて落ち合うこともある。子供の時に Hydrocephalus ででもあったかというような頭の娘で、髪が稍《や》や薄く、色が蒼《あお》くて、下瞼《したまぶた》が紫色を帯びている。性質は極勝気《ごくかちき》である。琴はいかにも virtuoso の天賦を備えている。これが若し琴を以て身を立てようとする人であったら、師匠に破門せられて、別に一流を起すという質《たち》かも知れない。
 この娘が段々お母様と親密になって、話の序に、遠廻しのようで、実は頗る大胆に、僕の妻になりたいということをほのめかすのである。お母様が、倅《せがれ》も卒業すれば、是非洋行をさせねばならないが、卒業試験の点数次第で、官費で遣られるか、どうだか知れないと話すと、わたくしがお金を持っていれば、有るだけ出して学資にして戴きとうございますなどという。
 お母様にもこの娘の怜悧《りこう》なのが気に入る。そこで身元などを問い合わせて見られる。このお麗《れい》さんという娘は可なり
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