一週間の間何となく物足らない感じをしている。
 この娘はそれ程|稀《まれ》な美人というのではないかも知れない。只薄紅の顔がつやつやと露が垂《したた》るようで、ぱっちりした目に形容の出来ない愛敬がある。洗髪を島田に結っていて、赤い物なぞは掛けない。夏は派手な浴衣《ゆかた》を着ている。冬は半衿《はんえり》の掛かった銘撰《めいせん》か何かを着ている。いつも新しい前掛をしているのである。
 僕はこの頃から、ずっと後に大学を卒業するまで、いや、そうではない、それから二年目に洋行するまで、この娘を僕の美しい夢の主人公にしていたに相違ない。春のなまめかしい自然でも、秋の物寂しい自然でも、僕の情緒を動かすことがあると、ふいと秋貞という名が唇に上る。実に馬鹿らしい訣《わけ》である。何故というのに、秋貞というのはその店に折々見える、紺の前掛をした、痩《や》せこけた爺さんの屋号と名前の頭字とに過ぎないのである。この娘は何という娘だということをも僕は知らないのである。しかし不思議と云えば不思議である。僕が顔を覚えてから足掛五年の間、この娘は娘でいる。僕の空想の中に娘でいるのは不思議ではないが、この娘が実在の娘
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