の機嫌《きげん》が悪い。病気かと思えばそうでもない。或日一しょに散歩に出て、池の端を歩いていると、古賀がこう云った。
「今日は根津へ探検に行くのだが、一しょに行くかい」
「一しょに帰るなら、行っても好い」
「そりゃあ帰る」
 それから古賀が歩きながら探険の目的を話した。安達が根津の八幡楼《やわたろう》という内のお職と大変な関係になった。女が立て引いて呼ぶので、安達は殆ど学課を全廃した。女の処には安達の寝巻や何ぞが備え附けてある。女の持物には、悉《ことごと》く自分の紋と安達の紋とが比翼《ひよく》にして附けてある。二三日安達の顔を見ないと癪《しゃく》を起す。古賀がどんなに引き留めても、女の磁石力が強くて、安達はふらふらと八幡楼へ引き寄せられて行く。古賀は浅草にいる安達の親に denunciate した。安達と安達の母との間には、悲痛なる対話があった。さて安達の寄宿舎に帰るのを待ち受けて、古賀が「どうだ」と問うた。安達は途方に暮れたという様子で云った。「今日は母に泣かれて困った。母が泣きながら死んでしまうというのを聞けば、気の毒ではある。しかし女も泣きながら死んでしまうというから、為方《しか
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