《やぶれづくえ》の前に、鼠色になった古毛布を敷いて、その上に胡坐《あぐら》をかいて、じっと僕を見ている。大きな顔の割に、小さい、真円《まんまる》な目には、喜の色が溢《あふ》れている。
「僕をこわがって逃げ廻っていた癖に、とうとう僕の処へ来たな。はははは」
 彼は破顔一笑した。彼の顔はおどけたような、威厳のあるような、妙な顔である。どうも悪い奴らしくはない。
「割り当てられたから為方《しかた》がない」
 随分無愛想な返事である。
「君は僕を逸見と同じように思っているな。僕はそんな人間じゃあない」
 僕は黙って自分の席を整頓《せいとん》し始めた。僕は子供の時から物を散らかして置くということが大嫌である。学校にはいってからは、学科用のものと外のものとを選《よ》り分けてきちんとして置く。この頃になっては、僕のノオトブックの数は大変なもので、丁度外の人の倍はある。その訳は一学科毎に二冊あって、しかもそれを皆教場に持って出て、重要な事と、只参考になると思う事とを、聴きながら選り分けて、開いて畳《かさ》ねてある二冊へ、ペンで書く。その代り、外の生徒のように、寄宿舎に帰ってから清書をすることはない。寄
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