革に月」、50−4]《つか》を握らざることを得なかった。
 然るに淘汰の跡で、寄宿舎の部屋割が極まって見ると、僕は古賀と同室になっていた。鰐口は顔に嘲弄《ちょうろう》の色を浮べて、こう云った。
「さあ。あんたあ古賀さあの処へ往って可哀がって貰いんされえか。あはははは」
 例のとおりお父様の声色《こわいろ》である。この男は少しも僕を保護してはくれなんだ。しかし僕は構わぬのが難有《ありがた》かった。彼の cynic な言語挙動は始終僕に不愉快を感ぜしめるが、とにかく彼も一種の奇峭《きしょう》な性格である。同級の詩人が彼に贈った詩の結句は、竹窓夜静にして韓非《かんぴ》を読むというのであった。人が彼を畏《おそ》れ憚る。それが間接に、僕の為めには保護になっていたのである。
 僕はこの間接の保護を失わねばならない。そして頗る危険なる古賀の室へ引き越さねばならない。僕は覚えず慄然《りつぜん》とした。
 僕は獅子の窟《いわや》に這入るような積《つもり》で引き越して行った。埴生が、君の目は基線を上にした三角だと云ったが、その倒三角形の目がいよいよ稜《かど》立っていたであろう。古賀は本も何も載せてない破机
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