「はい」
僕はしぶしぶ縁側に腰を掛けた。奥さんは不精らしく又少しいざり出て、片膝立てて、僕の側へ、体がひっ附くようにすわった。汗とお白いと髪の油との匂がする。僕は少し脇へ退《の》いた。奥さんは何故だか笑った。
「好くあなたは裔一のような子と遊んでおやんなさるのね。あんなぶあいそうな子ってありゃしません」
奥さんは目も鼻も口も馬鹿に大きい人である。そして口が四角なように僕は感じた。
「僕は裔一君が大好です」
「わたくしはお嫌」
奥さんは頬っぺたをおっ附けるようにして、横から僕の顔を覗《のぞ》き込む。息が顔に掛かる。その息が妙に熱いような気がする。それと同時に、僕は急に奥さんが女であるというようなことを思って、何となく恐ろしくなった。多分僕は蒼《あお》くなったであろう。
「僕は又来ます」
「あら。好いじゃありませんか」
僕は慌《あわ》てたように起って、三つ四つお辞儀をして駈け出した。御殿のお庭の植込の間から、お池の水が小さい堰塞《いせき》を踰《こ》して流れ出る溝がある。その縁の、杉菜の生えている砂地に、植込の高い木が、少し西へいざった影を落している。僕はそこまで駈けて行って、仰向に
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