し少しも偽らずに書こうと云うには、ここに書き添えて置かねばならない事がある。それはずっと後であった。僕は一度妻を迎えて、その妻に亡くなられて、二度目の妻をまだ迎えずにいた時であった。或る秋の夕方、古賀が僕の今の内へ遊びに来た。帰り掛に上野辺まで一しょに行こうということになった。さて門を出掛けると、三枝《さいぐさ》という男が来合せた。僕の縁家のもので、古賀をも知っているから、一しょに来ようと云う。そこで三人は青石横町《あおいしよこちょう》の伊予紋で夕飯を食う。三枝は下情に通じているのが自慢の男で、これから吉原の面白い処を見せてくれようと云い出す。これは僕が鰥《やもめ》だというので、余りお察しの好過ぎたのかも知れない。古賀が笑って行こうと云う。僕は不精々々に同意した。
僕等は大門の外で車を下りる。三枝が先に立ってぶらぶら歩く。何町か知らないが、狭い横町に曲る。どの家の格子にも女が出ていて、外に立っている男と話をしている。小格子というのであろう。男は大抵|絆纒着《はんてんぎ》である。三枝はその一人を見て、「好い男だなあ」と云った。いなせとでも云うような男である。三枝の理想の好男子は絆纒着の
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